アメリカと日本の精神科治療の考え方の違い
- 2021年7月27日
- クリニックブログ
こんにちは。本日も神戸オイレクリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。今日も日差しが強い神戸です。日焼けしたくないですね。ちょっとそこまでだったのに日焼けしてる時ってありませんか?日焼け止めって今色々な種類のものがお店で売っていますよね。スプレータイプやスティックタイプ、塗りやすいものが出てきて昔に比べて種類がたくさんあって選ぶのも楽しい。子どもの頃は日焼けすること気にしていなかったけど紫外線は肌に負担をかけるので子どもの頃も少しは気を付ければ良かったなと大人になって思います。
さて、本日はアメリカと日本の精神科治療の考え方について書いてみようと思います。先日、いつものようにYouTubeを視聴していたら、VOGUE Japanのチャンネルにアメリカのケンダルジェンナーという有名なモデルさんが、パニック障害や不安障害を抱える大切な人を、どのように支えるべき?をテーマにドクターと語り合うという動画を見ました。それを見ていると、日本との精神科の治療の考え方が大きく違うことを知り、私は共感することばかりで色々考えさせられました。昔は、日本は精神科治療に関してアメリカより50年は遅れていると言われていました。日本ではまだまだ薬をたくさん処方されてそれを服用しづつけているのに症状が改善しておられない患者や、長期にわたり入院をさせられている方もおられます。そもそも日本はまだまだ精神的な病気を抱えておられる方に対して、偏見だらけで、患者さんたちは生きつらさを感じておられる方がたくさんいます。本当に悲しくなります。そこで、実際アメリカと日本での違いを見ていきたいと思います。
アメリカでは、1990年に成立した「障害を持つアメリカ人法」通称ADA法という法律があります。障害を持つ人にとっての「公民憲法」と呼ばれる法律です。
●障害を持つアメリカ人法
ADA法は、1964年制定の公民憲法が人種、性別、出身国、宗教による差別禁止をしていると同様、障害を持つ人がアメリカ社会に完全に参加できることを保証したものです。
ADA法は、大きく4つの柱からなります。①雇用②公共サービス③公共施設④電気通信の平等からなります。1~3までは、日本でも2016年に障害者差別解消法が施行されており、ある程度どのようなものかをイメージしやすいと思います。ちなみに電気通信の平等とはオペレーターを通じて、声が聞こえる人と、聞こえない人を繋ぐサービスです。日本でも同じサービスが実施されています。
●アメリカのメンタルヘルス事情
アメリカでは成人の約5人に1人が精神疾患を経験しており、そのうち約25人に1人が深刻な疾患を患っていると言われています。診断名は多いものから、不安症、うつ病、双極性障害、統合失調症となっています。
アメリカの職場におけるメンタルヘルスケアシステムでは。個人のプライバシーが尊重され、基本的に病状を人事部や職属の上司が知ることはありません。メンタルヘルスの専門家に判断を受けたのちに、人事部に自身が不調であることを伝えます。その後、人事部が契約している米国保険会社などの第三者機関に連絡します。連絡を受けた第三者機関は診断を出したメンタルヘルスの専門家に、復職後に必要な職場でのサポートについて指示を仰ぎます。その内容を第三者機関は人事部に伝えます。こうすることで職場の上司や人事部に症状の詳細を知られず、安心して専門家を訪れることができるようになっています。
また、精神科の治療は、二本柱で行われています。一つは投薬で、もう一つはカウンセリングです。精神疾患の種類や症状によって、カウンセリングだけ、投薬だけ、もしくは二つを合わせてと状況によってアプローチを変えていきます。
また、アメリカには「サイコロジスト」と呼ばれる職業があります。日本においていうと臨床心理士に近い職業と言えば分かりやすいかもしれません。日本の臨床心理士は、病院臨床・産業心理・教育心理(スクールカウンセリング)・精神保健福祉・司法矯正・心理相談と多岐に渡りますが、サイココロジストは精神病理を持つ患者の診断・治療・教育に特化しています。
サイコロジストは、精神科医による単剤投薬を主とした科学的治療法とは違ったアプローチをするため、精神科医と並列的な立場で患者にと対応します。ゆえにお互いの活動に刺激を受け合いながら、患者にとってより良い治療法を模索していきます。日本の精神科での医者と患者だけの密室の関係とは違うこのアプローチが、日本の精神医療と大きく異なる点です。
●アメリカと日本の比較~心の病気は精神力とは無関係
日本では法律に障害者という言葉が付きますが、アメリカでは、障害を持った人という意味の、with disabilities という言葉が付きます。人格と障害は別であるということが強く意識されています。日本語ではいい表現がないため、障碍、障がいという言葉に置き換えられています。ADA法は、障害を持った人のとっての公民権法と呼ばれるような法律です。ここで重要なのは、障害者という言葉で一括りにされていなく「障害を持った人」という意味の、with disabilities とされる点です。人格と障害は別であるということが強く意識されています。
日本で変化が起きたのは、ある日本の製薬会社で使われた「鬱は心の風邪」というキャッチフレーズを知っている人も多いと思います。
誰でもかかる可能性があるということを強調し、精神科受診への心理的ハードルを下げる効果を狙ったものでした。実際に効果はあったようで、その結果。患者は4年で倍増し、抗うつ剤の市場は約6倍の規模に成長しました。
ですが、残念なことに風邪のように寝ていれば治る、休みをとれば治る。と世間が曲解してしまったという感は否めません。鬱病は軽度、中度、重度と症状によって分類されており、進行を防ぐための早期治療が勧められています。特に軽度の鬱病であれば薬を使わずともカウンセリングだけで十分の場合もあります。
しかし、中~重度になるとカウンセリングと薬の二本柱を用いた治療が不可欠になります。2週間以上、体の調子が悪くもし、精神的に辛いと思ったら、すぐに病院に行くことをお勧めします。最初は精神科に行く事はハードルが高いと感じる人も多いと思います。体調が悪いと感じたら、かかりつけの病院や企業の医務室などにまずは相談してみましょう。自分で判断せず、信頼できる医者に相談することが重要になります。
日本はまだまだ偏見があるのも事実です。少しでも精神科治療に理解がすすむことを願っています。