失感情症(アレキサイミア)
- 2021年7月7日
- クリニックブログ
こんにちは。本日も神戸オイレクリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。今日は朝から大雨の神戸でした。起床時間になっても外がまだ暗く危うく寝坊するところでした。今日は七夕だというのに何だか残念な天気ですね。子どもが小さい頃は、幼稚園なんかでもらった笹の葉に私も毎回一緒になって願い事を書き、飾っていたことを思い出します。星空は今夜は見えなさそうですが、ひっそりと手を合わせて願い事をしてみようかと思います。今は、本当に一刻も早く新型コロナウイルスが落ち着いて、元通りの日常に戻ることを願います。もう本当に皆さん新型コロナウイルスのい影響で本当に疲れ切っていると思います。私は医療従事者ですが、最前線で働いている友人たちを思うと本当に頭が下がりますし、疲れやストレスは想像を絶すると思います。本当に感謝しています。
さて、今日は、失感情症(アレキサイミア)について書いていきます。
皆さん、失感情症(アレキサイミア)というのを聞いたことはありますか?この名前だけ見ると、「感情を失っていること」「感情がないこと」と誤解されがちですが、そういうわけではありません。
失感情症(アレキサイミア)は性格特性です。自分の感情(情動)への気づきや、その感情の言語化の障害、また内省の乏しさといった特徴があると言われています。心身症の説明に用いられる概念ですが、近年は衝動性や共感能力の欠如など、ストレス対処や対人関係を巡る問題との関連が研究されています。
例えば、仲の良い友達と喧嘩してしまったとき、どのような気持ちになりますか?
恐らくは、「悲しい」という気持ちになると思います。そして、失感情症(アレキサイミア)の傾向がある人もほとんどが似たような感情を抱きます。しかし、それが「悲しい」という言葉に当てはまっているのかが分からないのです。人間は言葉に助けられて認知を行っていますが、当てはまる言葉が見つからないので、その人にとってはそうした出来事が「悲しい」と認知できないのです。
この失感情症(アレキサイミア)という言葉が最初に唱えられたのは1972年のことです。ハーバード大学マサチューセッツ総合病院のP.E.シフネオス医師は長年、いわゆる古典的「心身症」と言われていた患者さんたちの治療に取り組んでいました。その臨床経験からこの患者さん達にはある心理的な特徴があることに気づきました。
あまり生気が感じられず、葛藤状況やフラストレーションがたまる状況では、内省したり困難に上手に対処したりするのではなく、むしろそれを避けるための行動に走ってしまうというのです。そしてその最大の特徴は、「自分の感情を表現する言葉を見つけるのが難しい」ということでした。そこから感情を言い表す言葉が欠けていること=失感情症という概念がでてきたのです。
なぜ、心身症というからだの病気とこうした感情を言葉にすることが難しいということと関係あるのでしょうか?それは私たちのからだとこころは密接に関係があるからです。不安や喜びといった喜怒哀楽は情動(emotion)と呼ばれます。怒ると顔が真っ赤になったり、恐怖に襲われ不安になると心臓がドキドキ声が上ずったりします。このように情動はからだの変化と直結し、自律神経系の変化や表情・声の変化といったからだの変化と一体となっています。
この情動の変化はまた、私たちの主観的な気持ち=感情(feelings)の変化とも普通結びついています。この感情の変化について、私たちは自分が「腹が立っている」とか「とっても怖い思いをした」とその感情に気づき、それを言葉で表現をすることを普段何気なく行っていますが、心身症の患者さんたちはどうもそうしたことが上手ではないというのです。自分の微妙な感情の変化に気づき言葉にしていくことは、私たちの健康維持にとりきわめて大切です。
失感情症(アレキサイミア)の傾向がある人はつらい状況に置かれても感情を表に表せないため、周囲から我慢強い人、ポーカーフェイスと見られる傾向があります。逆に、自分の感情が認知ができないために、行動と感情にずれが生じ、相手にネガティブな印象を与えることもあります。
また、例えば悲しいときがどういうときなのか分からないため、悲しいときにとるべき行動も見当がつかない傾向があります。ある出来事が起きて、その場にいる全員が悲しい気持ちになっているときに、一人だけいつもと同じトーンで話し始めて、「空気が読めない」「感情がないのか」と言われてしまうことがあります。
さらに、ただでさえ自分の気持ちが分からないので、他人の気持ちも想像できず、対人関係を築くことにも難があるとされ、「人の気持ちを考えない」「コミュニケーションが下手」とみなされることが多くなります。そして、物語の登場人物の気持ちが分からないという特徴もあります。
失感情症という名前ですが、病気ではなく、冒頭でも触れたように、実際に感情を失っているわけではないので、それ自体に直接的な問題はありません。しかし、失感情症の傾向がある人は、本能的にストレスを軽減しようとするために、寝込んでしまったり、急に泣き出してしまったりと実生活に支障をきたす場合があります。
また、失感情症が原因で、以下のような疾患を招きやすくなります。
◎摂食障害や依存症
失感情症の傾向がある人は、漠然と嫌な気持ちになったときに、気持ちを表現できず、代替物で本能的に気分を解消しようとします。その結果、摂食障害や薬物依存症につながってしまうといわれています。
◎心身症やうつ病
さらに、失感情症の傾向がある人は、抑制された感情やストレスに気づけないため、対処することができず、どんどん心に負担がかかって、突然うつ病や心身症を発症してしまうケースが多く見られます。
・感情がないと言われる
・自分の感情が分からない
など感じたら一度、心療内科、精神科にご相談ください。失感情症による心の病がかくれていることもあります。
気軽にご相談ください。